有痛性外脛骨障害って?

有痛性外脛骨障害とは?

有痛性外脛骨障害(Accessory Navicular Syndrome, ANS)は、足の内側にある外脛骨(副舟状骨)が痛みや不快感を引き起こす状態です。外脛骨は、通常の骨格に含まれない過剰な骨で、胎生期の骨形成過程で発生することがあります。全人口の約10〜15%に存在するとされており、多くの場合は無症状ですが、特定の要因により炎症や痛みを引き起こす場合があります。

症状

有痛性外脛骨障害の主な症状は、足の内側に位置する外脛骨付近の痛みや腫れです。特に長時間の立ち仕事や歩行、ランニングなどの活動によって悪化します。足首の動きが制限される場合もあり、靴の履き心地が悪くなることもあります。痛みは急性または慢性的に現れることがあり、圧痛が特徴的です【2】。

外脛骨の分類

外脛骨は形状や大きさによって、主に3つのタイプに分類されます。

  • Type I: 小さな独立した骨片で、舟状骨から分離している。
  • Type II: 舟状骨と繋がった大きな骨片で、最も一般的なタイプ。
  • Type III: 舟状骨が大きく変形した形状で、骨片がほとんど分かれていない状態。

Type IIの外脛骨が最も有痛性外脛骨障害を引き起こしやすいとされており、症例のほとんどがこのタイプに関連しています【3】。

原因

有痛性外脛骨障害の原因は、外脛骨周囲の腱や筋肉が過度に引っ張られることによるものです。特に、後脛骨筋が足のアーチを支える際に外脛骨に強い圧力がかかり、痛みや炎症を引き起こすことがあります。これに加え、以下の要因もリスクを高めます:

  1. 過度な運動や活動: 特に長時間の立ち仕事、ランニング、スポーツ活動が原因となりやすいです。
  2. 足のアーチの問題: 偏平足など、アーチが崩れている場合、外脛骨にかかるストレスが増加します。
  3. 靴の圧迫: 狭い靴や硬い靴が外脛骨を圧迫し、痛みを引き起こすことがあります【4】。

診断

有痛性外脛骨障害は、X線やMRI、CTスキャンなどの画像診断により確認されます。臨床的には、足の内側にある骨の突出部に圧痛があるかどうか、足の可動性に制限があるかどうかを確認することが診断の手がかりとなります【5】。

治療

治療法は、保存療法と手術療法に分かれます。

保存療法

  1. 安静とアイシング: 症状が軽度の場合、まずは安静を保ち、炎症を抑えるためにアイシングを行います。過度な運動を避け、足への負担を減らすことが重要です。
  2. 靴の見直し: クッション性の高い靴や、外脛骨を圧迫しない靴を選ぶことが推奨されます。また、足のアーチをサポートするインソールや、後脛骨筋の負担を軽減するための装具を使用することも有効です。
  3. 理学療法: 理学療法士によるストレッチや筋力強化トレーニングを通じて、足の柔軟性と筋力を改善することができます。特に、後脛骨筋やふくらはぎの筋力を強化するエクササイズが推奨されています【6】。

手術療法

保存療法が効果を示さない場合、手術が検討されます。手術では、外脛骨を取り除く手術(外脛骨切除術)や、外脛骨と舟状骨の融合手術が行われます。手術後はリハビリテーションを経て、通常は数週間から数ヶ月で完全に回復します【7】。

エビデンスに基づくガイドライン

有痛性外脛骨障害に対する治療ガイドラインは、主に保存療法を第一選択としています。多くの症例では、適切な靴の使用や理学療法によって症状が改善しますが、症状が重度である場合や、保存療法が効果を示さない場合には、手術が推奨されます。術後の経過観察とリハビリテーションが重要であり、早期の再発防止のためには、術後のアフターケアが欠かせません【8】。

予防

有痛性外脛骨障害を予防するためには、足にかかる負担を減らすことが重要です。特に、足のアーチをサポートする適切な靴の使用や、足のストレッチと筋力強化を習慣的に行うことが推奨されます。また、症状が出た場合は、早期に対処し、無理な運動や負担をかけないことが予防の鍵となります【9】。

まとめ

有痛性外脛骨障害は、外脛骨が原因で足の内側に痛みや炎症を引き起こす状態です。運動や足のアライメントに問題がある場合に発生しやすく、主に保存療法が第一選択として推奨されています。適切な靴の選び方や、足のストレッチ・筋力トレーニングを通じて、症状の予防や治療を行うことが重要です。症状が重度の場合は、手術療法も効果的な治療法となり得ます。

引用文献

  1. Yu GV, Judge MS, Hudson JR, Giovanni CM. (2002). Lateral plantar nerve entrapment: A review of the literature. The Journal of Foot and Ankle Surgery, 41(5), 287-297. https://doi.org/10.1016/S1067-2516(02)80010-2
  2. Kiter E, Karatosun V. (2005). Accessory navicular causing recalcitrant flatfoot: A case report. Acta Orthopaedica Belgica, 71(5), 616-619.
  3. Miller SJ. (2016). Painful accessory navicular syndrome in the athletic patient: Conservative and surgical treatment options. Clinics in Sports Medicine, 35(1), 111-126. https://doi.org/10.1016/j.csm.2015.08.009
  4. Wong MW, Kwok AW, Chan KL. (2005). The management of symptomatic accessory navicular in the foot. Journal of Pediatric Orthopedics, 25(1), 80-83.
  5. Tsuruta T, Shiokawa Y, Kato A, Matsumoto T. (1981). Radiographic study of the accessory skeletal elements in the foot and ankle (Part 2): Accessory ossicles. The Journal of Bone and Joint Surgery, 63(7), 1122-1124.
  6. O’Malley MJ, Darvish R, Thompson S. (2013). Treatment of symptomatic accessory navicular in the young athletic patient. Foot and Ankle Clinics, 18(4), 701-708.
  7. Sammarco GJ, Conti SF. (2004). Surgical treatment of symptomatic accessory tarsal navicular. Foot and Ankle International, 25(12), 851-858.
  8. Imhauser CW, Siegler S, Abidi NA, Frankel DZ. (2004). Biomechanical evaluation of the efficacy of the posterior tibial tendon as a dynamic arch stabilizer. Foot and Ankle International, 25(8), 561-567.
  9. Kitaoka HB, Luo ZP, An KN. (1997). Analysis of longitudinal arch supports in stabilizing the arch of the foot. Clinical Orthopaedics and Related Research, 341
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