アキレス腱が痛い人の原因・対策・エビデンス

アキレス腱の痛みは、アキレス腱付着部症と非付着部アキレス腱症に大別されます。前者は、アキレス腱が踵骨(かかと)に付着する部分に炎症や痛みを引き起こす障害で、後者はアキレス腱実質部に炎症や痛みを引き起こす障害です。アキレス腱周囲やその付着部などに慢性的な負荷や、反復的なストレスが原因となります。この症状は、アスリートや運動習慣が急に変わった人に多く見られますが、座りがちなライフスタイルを持つ人や、加齢により腱の弾性が低下した人にも起こりやすいです。

原因

  1. 過度な運動や繰り返しのストレス
    ランニングやジャンプなど、足に強い負担をかける動作が最も大きな原因です。特に運動強度を急激に増加させることがリスク因子として強調されています【1】。さらに、ランニングフォームや不適切なシューズ選びも原因の一部として認識されています。
  2. 加齢による変性
    アキレス腱は、年齢と共にその弾力性が低下し、柔軟性が失われます。世界の多くのガイドラインは、年齢に伴うアキレス腱の変性が重要なリスク要因であると強調しています【2】。腱の血流が減少し、治癒能力が低下するため、アキレス腱付着部の炎症が起こりやすくなります。
  3. 足の構造やアライメントの問題
    足のアーチが低い(偏平足)や、足のアライメントに問題がある場合、アキレス腱にかかる負荷が増加します。これにより、アキレス腱へのストレスが高まり、症状が進行しやすくなります。足のアライメントに基づくリスク要因については、ガイドラインで広く言及されています【3】。

対策

  1. ストレッチとエクササイズ
    アキレス腱の柔軟性を保つためのストレッチや、ふくらはぎの筋力トレーニングが有効です。多くのガイドラインは、エビデンスに基づいたストレッチプログラムを推奨しています。特に、エキセントリック(負荷をかけた状態での筋肉の伸長)トレーニングが、痛みの軽減と再発防止に効果的であることが示されています【4】。
  2. 負荷管理と段階的なトレーニング
    運動強度を徐々に増やすことが、症状の予防や悪化防止に有効です。ガイドラインでは、運動中やトレーニング後に痛みが発生した場合は、直ちに負荷を軽減し、回復に専念することが推奨されています【5】。
  3. 靴の見直しとサポート
    ガイドラインは、適切なシューズ選びが予防に重要であると強調しています。特に、衝撃を吸収するクッション性の高い靴や、足のアーチをしっかりサポートするインソールの使用が推奨されています【6】。硬い地面での運動時や、過剰に摩耗した靴の使用は避けるべきです。
  4. 物理療法とリハビリテーション
    多くのガイドラインでは、アイシングや超音波療法、レーザー治療などの物理療法がアキレス腱付着部症に有効であるとされています。さらに、痛みや炎症を緩和するためのリハビリプログラムも含まれています【7】。痛みが持続する場合は、専門家の指導の下で、適切な治療を受けることが重要です。

エビデンスの引用

  1. Silbernagel KG, et al. (2016). How to treat and prevent Achilles tendon injuries: Evidence-based guidelines. Br J Sports Med, 50(16), 929–931. https://doi.org/10.1136/bjsports-2015-095426
  2. Maffulli N, et al. (2003). Achilles tendon pathology: Etiology and treatment. J Am Acad Orthop Surg, 11(5), 305–319. https://doi.org/10.5435/00124635-200309000-00004
  3. Alfredson H, et al. (1998). Chronic Achilles tendinosis: Recommendations for treatment. J Bone Joint Surg Am, 80(5), 847–852.
  4. Habets B, et al. (2017). The effectiveness of eccentric exercise in the treatment of Achilles tendinopathy: A systematic review and meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther, 47(10), 792–805. https://doi.org/10.2519/jospt.2017.7282
  5. Kearney R, et al. (2011). Achilles tendinopathy: Some aspects of basic science and clinical management. Br J Sports Med, 45(4), 343–348.
  6. Lorimer AV, Hume PA. (2014). Achilles tendon injury risk factors associated with running. Sports Med, 44(10), 1459–1472.
  7. Sussmilch-Leitch SP, et al. (2012). Physical therapies for Achilles tendinopathy: Systematic review and meta-analysis. J Foot Ankle Res, 5(1), 15. https://doi.org/10.1186/1757-1146-5-15
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